2019

西久保テラスハウス

集合住宅

  • 用途:長屋
    所在:武蔵野市西久保
    竣工:2019年11月
    構造:木造
    階数:地上2階
    敷地面積:203.14㎡
    建築面積:81.20㎡
    延床面積:161.91㎡

  • 設計:佐久間徹設計事務所
    施工:宮嶋工務店
    撮影:根本健太郎

JR三鷹駅からほど近く、閑静な住宅地に建つテラスハウスです。テラスハウスという言葉には、全戸専用の庭と駐車場を持ち合わせた集合住宅、というニュアンスを込めました。

建築可能な延べ床面積は、敷地の大きさや建ぺい率・容積率からきまります。賃貸住宅の計画の際には、立地や周辺環境を踏まえたうえで、この延べ床面積から、どのような大きさの住戸を何戸配置するかを考えていきます。今回の立地であれば、ファミリー向けの上質でゆったりとした住戸が望ましいと判断し、許容の面積160㎡強を2つに分けた80㎡ほどの住戸が2戸で構成することとなりました。当然、3戸、4戸、6戸、といた選択肢も検討した上での判断です。建築基準法の上では「長屋」という用途になりますが、共同住宅との違いは、玄関から道路まで直接避難できるかという判断になります。1階に玄関が配置されれば、2階へは住戸内の階段で登っていくことになるため、2階建ての住戸が横に並んだ形式が生まれやすくなります。その結果、専用のアプローチや庭、内部の階段をもつ、ほとんど専用住宅のような集合住宅となるのです。

さて、閑静な住宅街に立地するため、南側に庭をもうけ、LDKを連続させ採光の基本としました。2階の居室も、できるだけ南面させたプランとしています。構造は木造です。上下階の騒音については、同じ住戸内のみの関係だけで済みます。ゆったりとしたファミリー向けですので、賃貸ではあまり見られない、木造らしさを残しておきたいと考え、1階の天井裏の梁を現しとして見せて表現し、一部、柱もそのまま表出させました。空間はゆったりと確保できています。

木造の賃貸住宅は、やや性能に劣りそうなイメージがつきまといます。しかしながら、適正な配置計画、適正な関係性やつくりの詳細を判断できれば、これほど合理的でやわらかな暮らしに合った構造はないと感じています。木造の集合住宅をつくる際の、ベンチマークとして考えていきたいです。

ところで、建て主の厚意もあって完成直後の内覧会を行うことができました。そしてなんと、この内覧会にお越しいただいた方のうち、2組の世帯がそのまま入居を決めてくださり、すぐに満室になりました。もう少しみなさまにご覧いただきたい気持ちもありましたが、とても嬉しい展開でした。